| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-276
種の分布モデルは、保全計画を立てる際によく用いられるようになってきた。分布モデルの構築には、適切なスケールを設定することが重要であるといわれる。従来の研究では、単一のスケールで分布と環境との対応が検討されてきた。
しかしながら、猛禽類をはじめとした大型で移動能力が高い野生動物の多くは、複数のスケールで生息地選択を行なっている、つまり、階層的な生息地選択を行っていることが知られている。すなわち、地域スケールで採餌や営巣に適した環境を選択し、その中で地形や林相といった局所的な要因に基づいて、定着する場所を決定していると考えられる。
したがって、種の分布は複数のスケールの環境要因で決定されており、分布モデル構築の際に複数のスケールの環境要因を考慮することは、モデルの説明力や推定精度を向上させ、結果として効果的な保全策につながると考えられる。
そこで本研究では、アンブレラ種として用いられることが多いクマタカ(Spizaetus nipalensis)を対象として、Maximum Entropy Modeling (Maxent)を用いて、日高、十勝、釧路地域における分布モデルを構築した。使用したデータは、クマタカの営巣位置のデータと、地形と植生に関する環境指標(平均標高、急傾斜地割合、起伏量、森林面積)である。局所環境と周辺環境という、二つの異なるスケールで分布モデルを構築した。また、二つのモデルを比較することで、クマタカの生息地選択がスケールによって異なるのか、すなわち生息地選択に階層性が存在するかを調べた。そして、異なるスケール下で構築された分布モデルによって、推定された生息適地がどのように異なるかを示した。
これらの結果に基づき、複数のスケールから保全を考えていくことの重要性に関して議論する。