| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-278
メダカOryzias latipesは、その飼育の容易さから観賞魚としての需要が高く、さまざまな改良品種が作製されている。その代表的なものに、メダカの黄色変異に基づく改良品種であるヒメダカがあげられる。ヒメダカの体色は、12番染色体上のslc45a2遺伝子に変異によって、表皮における黒色色素の生産が阻害されることで生じていることが知られている。近年、環境教育を理由としたヒメダカの放流や、養殖池からの逸出、遺棄的放流などによる野生下への流出と、それらが野生のメダカと交雑することで起こる遺伝的撹乱が懸念されている。一方で、体色の異なる野生のメダカとヒメダカでは交雑が生じにくい、体色の目立つヒメダカに対する捕食圧が高いなどの可能性から、ヒメダカによる遺伝的攪乱のリスクは低いという可能性が示唆されている。しかし、これらの可能性を検証した研究はなく、野生下にヒメダカが放たれた場合に、野生のメダカに与える遺伝的影響については、十分な情報が得られていない。そこで本研究では、ヒメダカの体色が配偶者選択・捕食圧にあたえる影響の検証を目的とした。
配偶者選択実験において、野生型1尾に対して野生型とヒメダカ型各1尾を選択させた。その結果、雌雄の両方で野生型とヒメダカ型をほぼ同確率で選択し、配偶者選択において、体色の違いが与える影響は少ないと考えられた。捕食者はオオクチバスMicropterus salmoidesを使用した。捕食実験として、野生型とヒメダカ型雌雄各1尾を捕食者の飼育水槽へ投入し、最初に捕食された個体を記録した。その結果、ヒメダカが多く捕食される傾向がみられ、目立つ体色が捕食圧を高めているということが示唆された。以上のことから、ヒメダカは体色が目立つため、捕食者に狙われやすいが、野生のメダカの配偶者として選択される可能性は十分にあり、その影響は非常に高い可能性がある。