| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-288
野辺山高原における絶滅危惧種アサマフウロの自生地分布と訪花昆虫
近藤綾希子・大窪久美子・大石善隆・(信大・農・森林科学)
アサマフウロ(Geranium soboliferum Komar.)はフウロソウ科の多年生草本で,国内では本州の中部地域に局所的に分布する。本種は開発等により近年自生地が減少し,環境省版レッドデータブックでは絶滅危惧ⅠB類に指定されており,保全策の検討が求められる。しかし本種の生態に関する知見は少なく,現状では保全のための対策を立てることが困難である。発表者らは本種が虫媒による他家受粉の繁殖生態を有することを明らかにし,本種個体群の種子繁殖を維持するためには地域におけるポリネーターの存在が不可欠であることを示した(遠藤・大窪,2003)。また同時に八ヶ岳山麓に位置する信州大学農学部附属AFC野辺山ステーションにおける本種への訪花昆虫相の調査により,本種のポリネーターは主に外来種のセイヨウミツバチであったため,地域における在来送粉生態系への影響が指摘された。本研究では前回の調査よりも広域な範囲で分布および保護植物としての状況を把握し,さらに前回の訪花昆虫相の結果を検証し,最終的には本地域におけるアサマフウロのより具体的な保全策を検討することを目的とした。
分布調査は、現地踏査を前回の調査(遠藤・大窪,2003)で本種の生息が確認された9メッシュ(各メッシュ 1km×1km)を含む計23メッシュを対象に行い,確認された生育地については保護植物評価法(大場1998)を用いて保全の危急性を評価した。次に訪花昆虫調査は前回と同様に一定時間に本種に訪花した昆虫について記録し,同定ができなかった場合はその個体を採集し,標本を作成した。また本種の結実状況についても記録した。今回確認された訪花昆虫はハチ目(ミツバチ科やコハナバチ科等),チョウ目,ハエ目(主にハナアブ科)であった。