| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-298
ホシザクラ(Cerasus tama-clivorum)は,東京西部の多摩丘陵の二次的自然において発見され,2004年に新種記載された野生のサクラである.多摩地域の希少種として,一部の愛好者を中心に保全と利用の声が高まっている.しかし,本種の生態・生育環境に関する情報は乏しい.
本研究では,これまで公園管理者や愛好家の間で散在していた分布情報をとりまとめ,生育状況を明らかにしながら管理状況を明らかにすることで,本種を含めた多摩ニュータウンの都市内樹林地における保全・利用のための方策を検討する.まず,これまで散在していた分布情報をヒアリング調査により集約・総合化し,直接観察することで個体識別し,分布台帳を作成した.次に,各個体の生育環境を,地形改変,周囲の植生情報,個体の生育する位置関係と管理状況の3点から評価し,二次的自然に由来する個体と人工的に植栽された個体に分類した.その結果,ホシザクラは,これまでに報告されていたよりも多くの個体が,八王子市・町田市・多摩市に分布していることが明らかとなった.
また,自然個体群と考えられる個体は全個体の22%で,残りは人為的に植栽されたものであった.自然個体群は都市公園・緑地,民有地にあり,その多くの個体は衰退傾向にあると考えられた.都市公園・緑地では,自然個体群がある樹林地の管理がなされておらず,ホシザクラに関する管理上の取り組みもなかった.そのためホシザクラの保全管理を進めるためには,自然個体群の衰退の原因を明らかにしながら,二次的自然の管理方法を検討してゆく必要がある.