| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-309
【背景と目的】日本にははげ山状態の鉱山跡地が数多く存在する。そこからは土壌流出などによる重金属汚染拡大の可能性が懸念されることから、鉱山跡地の植生回復が必要である。本研究では福井県の鉱山跡地に自生するナガミショウジョウスゲ(Carex blepharicarpa Franch.)(以下スゲと省略)のphytostabilizationへの利用可能性について検討するため、①重金属蓄積特性、②流出水中の元素濃度に与える影響について評価した。
【方法】①福井県の鉱山跡地に自生するスゲ中の重金属(Cu、Cd、Zn)について、地上部への蓄積量、根組織内への蓄積量、根表面への吸着量の3つに分けて分析した。②福井県の鉱山跡地に自生するスゲを用いたポット実験を行った。処理区は以下の3処理区を設定した:スゲ区;鉱山跡地土壌にスゲを植栽し、スゲの枯死葉で土壌表面を被覆、リター区;鉱山跡地土壌をスゲの枯死葉で被覆、土壌区;鉱山跡地土壌のみ。自然光の温室内で栽培し、定期的に灌水して流出水中のpH、元素濃度、DOC、TNの月変化を調べた。
【結果と考察】①スゲは、いずれの重金属でも地上部より地下部に高濃度に蓄積していた。また、そのほとんどが根組織内への蓄積であったことから、植物根における土壌中の重金属の安定化に効果的であると考えられる。②流出水中Cu、Cd、Zn濃度は、実験期間(2010年1月~11月)を通して土壌区>リター区>スゲ区となる傾向が見られ、スゲの存在により重金属流出が抑制されている可能性が示唆された。今回の結果から、スゲは水溶性重金属の流出の抑制など土壌中の重金属の安定化に非常に効果的であると考えられ、phytostabilizationへの利用に好ましい植物であることが示唆された。