| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-310
近年世界中で両生類の絶滅や個体群の減少が報告されるようになった。関東地方において、トウキョウダルマガエルはその分布域や個体数密度が急速に減少してきているといわれ、保全及び生態の解明を目的とした研究が必要とされている。しかし、両生類が置かれている現状や生息条件を調べた報告は未だ少ない。特に急速な開発により、水田環境の分断化及び構造の変化が顕著な都市域においての研究例は少なく、知見の蓄積が求められている。
そこで本研究では、都市化の進む平地水田に生息するトウキョウダルマガエルの現在の状況と、その生息状況を規定している要因を把握することを目的とした。調査は東京都府中市から国立市に存在する水田146地点において、2009年から2010年にかけて鳴き声の聞きとりと環境要因の計測を行なった。
調査の結果、トウキョウダルマガエルは全146地点の内、53地点で生息が確認された。トウキョウダルマガエルの在・不在と各環境要因との関係をGLMによってモデル選択した結果、最も当てはまりの良いモデルとして区画面積、畦の植被率、非灌漑期の通水の有無、土水路の有無、近接する区画間の距離の5変数が選択された。この結果より、水田から水が無くなる期間に退避場所となる環境が存在する事の重要性が示唆され、環境内の含水率を常時高く保つことが重要な要因であると考えられた。また、トウキョウダルマガエルの生息条件は景観的な要因よりも、水田区画内の局所的な要因に強く依存していると考えられた。よって、こうした区画内の環境を整えることにより、各個体群が保全されていく可能性が示唆された。