| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-319
農薬のリスク管理は,農薬の登録を申請する際のモデル水域生態系に対するリスク評価に基づいて実施されている。このリスク評価法は,個体レベルの室内毒性試験を機軸としているため,実際の生態系からの乖離が問題視されており,生態系内における順応的なリスク管理を可能にするためには,野外での農薬影響を分離・特定する手法を確立する必要がある。そこで本研究では,農業水路において農薬濃度が上昇した時期に被度の減少が確認されたエビモ(Potamogeton crispus L.)を対象に,同種に対する農薬影響の分離・特定を検討している。今回は,昨年の大会で発表した同種の室内バイオアッセイ系を改良した結果について報告する。バイオアッセイ系で用いる供試体は,エビモの殖芽を出芽させて得た個体とした。殖芽は野外で採取した後に5℃の暗条件下で保存し,出芽したものを順次,明期10℃8h・暗期10℃16h,光量子束密度20μmol・m-2・s-1程度の環境下で,ASTM標準試験法のMyriophyllum sibiricum Komarovを用いた毒性試験法で指定されている培養液の500倍希釈液を用いて低成長状態を維持しながら育成した。農薬曝露実験を行うことを想定した光および温度環境は,明期15℃12h・暗期15℃12h,光量子密度38.5μmol・m-2・s-1に設定した。上記培養液の100倍希釈液を用いて,馴化期間1週間,曝露期間2週間,回復期間2週間のタイムスケジュールに設定することを考えてエビモを育成した。その結果,曝露期間となる2週間の相対成長率は0.0180±0.0093 day,回復期間となるその後の2週間は0.0153±0.0044 dayであった。同手法では,昨年の手法で得られた成長率(0.0075±0.0023 day)よりも高い値が得られた。