| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-320
種子食昆虫による散布後種子捕食は、農地の雑草シードバンクの主要な減少要因の一つであり,雑草の生物的防除に貢献しうる。水田地域における畦畔は、種子食昆虫(コオロギ類とゴミムシ類)の重要な生息地であるため、これらを保全し、その生態系機能を高める適切な畦畔管理を行う必要がある。一方、近年では水田畦畔の省力的管理技術としてカバープランツの植栽が注目され、各地で導入されつつあるが、これによる種子食昆虫への影響は不明である。そこで本研究では、カバープランツの植栽が種子食昆虫の密度と雑草種子捕食率に及ぼす影響を調査した。
静岡県内の水田において2010年9月21~22日に調査を行った。複数のカバープランツの植栽された畦畔(センチピードグラス区、ヒメイワダレソウ区、シバザクラ区、ノシバ区)とメヒシバの優占する雑草植生の畦畔(雑草区)にて、外来イネ科雑草ネズミムギの種子捕食率と種子食昆虫密度を、それぞれ種子カード(種子を糊付けした布やすり)法と粘着トラップ法により定量した。
ノシバおよび雑草区の種子捕食率は2~3%/日と低かったのに対して、センチピードグラス、ヒメイワダレソウおよびシバザクラ区では29~60%/日と高かった。種子を捕食した昆虫は主にコオロギ類であることが、カメラ画像より確認された。コオロギ類の捕獲個体数は、センチピードグラス、ヒメイワダレソウおよびシバザクラ区において6~7個体/日と多く、一方ノシバおよび雑草区では1~2個体/日と少ない傾向が認められた。ゴミムシ類はほとんど捕獲されなかった。以上の結果から、水田畦畔にセンチピードグラス、ヒメイワダレソウおよびシバザクラを植栽することにより、コオロギ類の密度が高まり、これらによる雑草防除サービスが高まることが示唆された。