| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-323
北海道で,ごく普通に見られるサギ科鳥類はアオサギだけである.アオサギは魚食性で,河川,湖沼,海岸のほかに田んぼなど,水域を広く利用している.そこで,石狩地方の農業地域と石狩川沿いに点在する湖沼において,アオサギを対象に各環境の利用状況を明らかにし,アオサギの視点から農地生態系として,北海道の水田の価値について評価を試みた.石狩管内の当別町と新篠津村の農業地域に合計81kmの調査コースを設定し,車で低速走行(10~20km/h)しながらアオサギを探索し,確認した地点の地種(水田,畑,水路,河川など)を記録した.また,石狩川沿いに点在する4つの湖沼(しのつ湖,大沼,宝水沼,越後沼)にそれぞれ1~4か所の調査地点を設定し,アオサギの飛来数を調べた.調査期間は2009年の4月から11月までとし,約10日間隔で調査した.水田では,5月から少数が飛来するが,個体数が増加するのは6月中旬からで,7月上旬で最大になり,その後徐々に減少し,8月下旬以降はほとんど観察されなくなった.一方,湖沼では4月からアオサギが見られたが,6月上旬から8月上旬まで個体数が減少し,その後9月に観察個体数は回復した.2009年と2010年に,湖沼と水田でアオサギの採餌行動を観察した.その結果,湖沼では主に魚類を採餌し,水田では主にニホンアマガエルのオタマジャクシを採餌していた.アオサギが水田をよく利用していた6月中旬から8月中旬は,巣立ち前後の1ヶ月に相当しており,アオサギにとっては水田に生息するオタマジャクシが,巣立ち前の雛や巣立ち後の幼鳥を支える重要な餌資源になっていると考えられる.