| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-328
小笠原諸島では多くの固有種を含む独自の生態系が形成されている。しかし侵略的外来種が生態系を改変しつつあることが問題となり、現在ヤギを始めとする外来種の駆除事業が進められている。外来種の中には侵入先の生態系で大きなバイオマスを占めているものもあるので、外来種を駆除することが物質循環を介して他の種に影響を与える可能性がある。そこで本研究では、その影響を明らかにすることを目的とし、小笠原諸島の生態系を再現する数理モデルを開発した。
生態系の基本的な構造は既に明らかにされたもの(小笠原アクションプラン)を参考にする。不明なデータ(相互作用の強度、未調査の種の生態学的な情報(増殖率など))についてはランダムに決定する。植物は木本草本に分け、さらにそれぞれをストレス耐性戦略、荒れ地戦略、競争戦略に分ける(Grime 1974)。島の生態系内で循環する栄養塩は、主に島の外部から海鳥によってもたらされる他、チッ素固定を行う植物によっても少量もたらされるとする。動物はそれぞれの性質と好みに基づいて餌を捕食する。動物の捕食-被食関係はHolling II型の機能反応で記述する。単位時間で必要な栄養塩を取得できたら、それ以上は捕食しないとする。また、一定期間ごとに餌生物との遭遇頻度を参照し、捕食努力量の配分を変更する。
初期状態で設定した種が全て共存できるわけではないので、シミュレーションを複数回繰り返し、主要な生態系の構成要素(調査対象となる重要な外来種や保全対象となる重要な在来種)が共存する系を複数構築する。これらの系を用いてヤギを駆除するシミュレーションを行い、その影響を解析する。