| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-330
近年、ニホンジカが個体数を増加させ、ニホンジカによる植生への影響が顕在化している。ニホンジカを適切に管理するためには、その個体群動態を把握することが重要である。しかし、これまで用いられてきた個体群動態モデルは、モデルの構造が複雑でパラメータに多くの仮定値を必要とすること、県全体といった比較的大きなスケールでの推定しかできないこと、複数のニホンジカ密度指標を同時に扱えないという問題があり、現実の管理に応用しにくいものであった。そこで本研究では、約5km四方の狩猟メッシュ単位で収集されているニホンジカの密度指標(ニホンジカ目撃数/(出猟人×日); SPUE、糞塊密度、区画法)および捕獲数データに、一般化状態空間モデルを適用し、山梨県における狩猟メッシュ単位でのニホンジカの個体群密度、個体群増加率を推定した。推定の結果、山梨県内でのニホンジカ密度がメッシュによって大きく異なっていること、ニホンジカ密度が高いメッシュでは個体群増加率が抑制されていること、強度の捕獲圧をかけているメッシュでのみ個体群密度を減少させられていること、推定された個体群密度は糞塊密度及び区画法とよく比例する一方、SPUEについてはこれら2つの指標よりも関係性が弱いことが明らかになった。また、推定された個体群密度は、全県的に調査された立木の剥皮率と比例関係にあり、ある程度妥当な推定結果であると考えられた。