| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-337

石灰岩捨石集積場における植生遷移の人為的誘導を目的とした土壌改良試験

*東山優(岩手大共生環境),松木佐和子(岩手大共生環境),河合成直(岩手大応用生物化学)

岩手県大船渡市の石灰岩捨石集積場10haでは捨石終了7年経過後の現在、数種の草本が点在する状態で、多様性ある生態系の回復が望まれている。植生未発達の一因は土壌が母材由来のCaが過剰で礫が未風化であり、PやN、有機態Cが少ない環境であることが私共の09年の調査から判明している。私共は現地の植生回復を促すには遷移の初期段階において土壌の形成能力が高い植物の導入が必要であると考え、現地に生育し好Ca性のオニウシノケグサ(Fa)、および現地に生育しないが県内の石灰岩地帯に自生するイブキジャコウソウ(Ts)に注目した。本研究の目的はこれら植物が他の植物にも好適な土壌の形成能力を持つか否かを検証することである。本実験ではその第一段階として植物生育に対する土壌改良資材の効果を検討した。

本実験では1Lポットを用い、5mmで篩別した現地土壌を詰め対照区とした。さらに土壌改良資材(いずれも体積比3割)の鹿沼土、バーミキュライト、パーライト、富士砂の施用区、さらに現地の礫の影響を見るために篩別礫を添加した礫添加区を設けた。各区10ポットにFaの種子を400mg/ポットで播き、Tsは4個体/ポットの苗を移植し、元肥した後、8月から10月の2ヶ月間毎日2回潅水し温室栽培した。Tsの生育はバーミキュライト区とパーライト区で対照区とほぼ同様であり、鹿沼土区、富士砂区で対照区より悪く、礫添加区は対照区より3倍弱悪かった。一方Faでは礫添加区も含めてどの実験区も地上部と地下部の乾燥質量は対照区と有意差は無く生育良好であった。以上の結果より、Faは土壌改良資材無施用でも生育良好で土壌形成誘導に有効な植物であると思われた。今後、現地における土壌形成促進法としては、Tsは礫の多い環境で生育が不良であることより、最初にFaを導入し礫の風化を促進後、Tsを移植することが考えられた。


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