| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-344
今後の森林資源管理を考えるうえで、生態系への負の影響を軽減する非皆伐施業の導入を検討する必要がある。この研究では、北海道北部の天然生針広混交林の択伐施業地を対象として、林分状態の変化と伐採後のその回復過程、とくに「より複雑な初期構造を伐採後に残すことがその後のすばやい回復につながる」という仮説を検証した。北海道大学中川研究林にある55箇所の長期観察林分(面積それぞれ0.25ha)のデータを解析に用いた。これらの林分では、胸高断面積比で平均20.9 (sd 17.6) %の択伐が実施された後は手付かずで、約5年ごとに毎木調査(胸高直径6cm以上を対象)が行われた。伐採直後の林分の状態(胸高断面積合計、樹木の種およびサイズ構造多様度)は、林分間でばらつきが大きかった。また、それらの平均値は、多くの林分において、伐採後15年では初期値まで回復していなかった。解析の結果、林分間の胸高断面積合計の回復速度のばらつきは、伐採直後の種およびサイズ構造多様度と関係していた。今後、択伐施業を適用する際には、伐採後の林分状態の多様性を維持することが必要であることが示唆された。