| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-354
近年、農業従事者の高齢化や減少により、ため池の維持管理が行き届かず、堤の構造が不安定になったため池は、集中豪雨や台風、地震で決壊被害を誘発する。そこで、農林水産省は、非農家住民も含め、地域ぐるみでため池の維持管理を行い、ため池の決壊被害を未然に防止する減災社会づくりを重視し、2004年3月に「ため池群広域防災機能増進モデル事業」を創設した。三重県は、伊勢平野の岩田川流域に位置する津市片田田中地区において、2004~2008年度に当該事業を実施することになった。三重県は事前に地元や各機関と協議し、事業実施のため、地元自治会や小学校、県及び市の農林関係部局等で構成された協議会を設立した。ここでは、「決壊防止計画(ため池監視体制の強化)」、「洪水調節機能発揮計画(洪水調節容量の確保)」、「水利用調整計画(渇水時の用水配分)」、「多面的機能発揮計画(親水空間整備や生態系保全の構想)」の4つの基本計画を柱に、地元参加型の直営施工によるため池管理施設のハード整備を加え、「ため池保全活動」を実践してきた。これらを通して、ため池が食糧生産の貴重な水源であると同時に、洪水防止や生態系保全、やすらぎ空間などの形成に大きく寄与していることを、行政が地域住民と共に学び、ソフト面での効果も上げている。事業完了後も、地域ぐるみによるため池の維持管理や小学校によるため池の自然観察、行政によるため池保全の啓発普及などの活動が継続され、2010年3月、農林水産省の「ため池百選」に、本地区を含む流域のため池群が選定された。ここでは、ため池や里山、農地を自然豊かな環境と防災環境を供給する地域の共有資産として認識し、地域ぐるみで保全する意識の醸成を流域ベースで目指した「ため池保全活動」の取組みと構想について報告する。