| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-169

細菌の表現型可塑性による捕食抵抗が捕食‐被食系の個体群動態に及ぼす影響

山内悠司*, 吉田丈人(東大院・広域システム)

群集における生物種間の相互作用に影響を及ぼす要因の1つとして、生物種の表現型可塑性、その中でも特に捕食抵抗や誘導防衛が近年注目されている。しかし、捕食-被食と競争の2種類の相互作用が存在するような、1捕食者-2被食者系の個体群動態における被食者の捕食抵抗の効果は、未だ十分に明らかになっていない。そこで本研究では、1捕食者-2被食者の群集において、被食者の表現型可塑性による捕食抵抗が、捕食抵抗を持たない被食者や捕食者の個体群動態に及ぼす効果を明らかにすることを目的とした。

そのため、捕食者存在下で細胞を伸長させて捕食抵抗する細菌と捕食抵抗しない細菌、そしてそれらの共通捕食者である繊毛虫を用いて、捕食-被食のみの系(1捕食者-1被食者系)、競争のみの系(2被食者系)、両方存在する系(1捕食者-2被食者系)を作成した。これらをケモスタットで長期培養して各生物種の個体群動態及び細菌の捕食抵抗の度合いの動態を観察し、1捕食者-2被食者系と他の系とを比較した。

捕食抵抗する細菌とその捕食者から成る1捕食者-1被食者系では、細菌の捕食抵抗により捕食者が絶滅したのに対し、捕食抵抗しない細菌とその捕食者の1捕食者-1被食者系では、ロトカ・ボルテラ捕食-被食モデルのような個体数振動が見られた。また、2被食者系では、捕食抵抗しない細菌が優占した。1捕食者-2被食者系では、捕食者の個体数振動が減衰したこと、被食者間の競争の勝敗が変化したこと、各生物のバイオマスのピークが順番に起こり、それが繰り返されることなど他の系とは全く異なる動態が見られた。

1捕食者-2被食者系と他の系との比較から、捕食抵抗する細菌には、捕食者の個体群密度を低下させる効果、個体群密度の大きな振動を減衰させる効果、捕食者を介して間接的に被食者間の競争に影響し、その勝敗を変える効果の3つがあることが分かった。


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