| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-174

蒼サギの陰謀:近年増加するアオサギがサギ類コロニーの消長に及ぼす影響

*益子美由希, 徳永幸彦(筑波大・生命共存)

ここ20年、日本各地でアオサギの増加が報告されている。関東では1995年頃まで、サギ類コロニー(集団繁殖地)はダイサギ、チュウサギ、コサギ、アマサギ、ゴイサギの5種構成だったが、その後アオサギも一部のコロニーに加わるようになった。アオサギは毎年春のコロニー形成期において営巣を始める時期が他種よりも早いため、アオサギの増加はコロニーの構成や他種のコロニー選択に変化をもたらしている可能性がある。そこで、2002~2010年に茨城県周辺に形成された各コロニーについて、サイズと種構成比を調査し、コロニーの新規形成・継続・消失の消長パターンとアオサギ存在有無の関係を解析した。

その結果、毎年形成されたコロニーの数は15~19ヶ所で大きな増減は無かったが、サイズと種構成比は9年間でコロニー間での差が大きくなった。2004年以前はどのコロニーもサイズは200~2000個体ほどで、アオサギ以外の5種が均等に近い構成だったが、2006年以降は2000個体を超す大コロニーや、200個体未満でアオサギが優占する構成の小コロニーも出現した。種別の個体数変動をみると、アオサギが増加した一方、コサギとアマサギが減少した。新規形成されたコロニーの多くがアオサギを含んでいた。また、アオサギの個体数が多いコロニーほど何年も継続した一方、アオサギがいないか個体数が少ないコロニーほど消失していた。

以上より、近年のアオサギの増加は、コロニーのサイズや構成比のばらつきを大きくした。アオサギがコロニー形成を先導し、飛来の遅い他種はアオサギが先に繁殖開始しているコロニーを選択するようになったと考えられる。コサギとアマサギは、好みの食性や採餌環境がアオサギとは異なるため、個体数が減少したと考えられる。このように、アオサギの増加は間接的に他種の個体数変動にも影響していると考えられる。


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