| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-178
パッチ状の生息地に住む生物は、メタ個体群構造をもつことが知られている。メタ個体群における個体のパッチ間移動は、遺伝子流動、パッチの占有-絶滅動態、局所個体群動態、さらにはメタ個体群動態にも影響を与える重要なプロセスである。しかし、個体の移出に関わるプロセスを直接観察することは難しいため、それらを定量的に評価した研究は数少ない。
本研究では、パッチ状に分布する草地に生息するジャノメチョウMinois dryas を対象にパッチの質やパッチマトリクスに注目し、移動の定量化を試みた。ジャノメチョウは低地〜高地の明るい草地に分布する。草の間を低くゆっくりと飛ぶため、捕獲・標識が容易である。千葉県北部の3km×10kmの範囲で、白井市12カ所、印西市3カ所、計15カ所の草地を調査地とした。各草地でジャノメチョウを捕獲し、左前翅ウラに油性ペンで標識した。標識調査は2010年6月24日から2010年8月24日の2ヶ月間、15カ所の草地を週2回ずつ計15回実施した。調査は9時-18時の間に行った。
その結果、標識総数は3195頭(♀1370頭、♂1825頭)、再捕獲を含めた捕獲総数は5350頭となった。ある草地で標識された個体が、別の草地で再捕獲された例は183回あり、最長8.8km移動した個体もあった。
本講演では、個体のパッチ間移動の空間的・時間的傾向やそれに与える影響について考察する。