| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-191
シカなどの大型草食獣の爆発的増加や崩壊現象の事例は確認されているが、調査データの不足、個体群動態のみに着目した研究が多いことなどから実証的な研究は乏しい。本研究では、北海道南西に位置する洞爺湖中島のエゾシカ (Cervus nippon yesoensis) 個体群を取り上げる。中島は孤立した生息地であり、長期的かつ精度の高い調査が行われている。中島ではシカが高密度になると様々な餌資源が消失し、シカ個体群は餌不足に陥り崩壊する。しかし、低質な餌資源を新たに利用することで、前回よりも低い増加率で高いピークに達する。このような事例は世界的にも事例がない。そこで、本個体群に対して、餌資源を変数として導入した数理モデルにより、個体群動態を再現し、その要因を解析した。その結果、シカに複数のタイプがあり、それぞれの餌種の利用性が異なることを考慮した個体群動態モデルに、食性シフトの遅れやシカによる嗜好性が世代間で伝わることを仮定することで、当該生息地の個体群動態を再現することが出来た。以上の結果より、シカの食性シフトによって、本個体群の爆発的増加と崩壊現象が説明できることが示唆された。