| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-233
沈水植物は、淡水域における主要な一次生産者であるとともに、魚類・水生昆虫などに生息環境を提供する機能を持つ。しかし近年では、日本各地の河川・湖沼や農業水域における環境改変や侵略的外来生物の影響によりその衰退が著しく、日本産水生植物の約25%が絶滅危惧種になっている。現在、在来沈水植物群落の保全と再生は、淡水生態系ネットワークの回復にとって喫緊の課題となっている。本研究では、自然再生事業が予定されている福井県三方湖流域の水田水路において、沈水植物の分布に影響する生物的・非生物的要因を解析した。調査は59地点で2010年7、9月に実施し、各調査地点で沈水植物の種・被度、動物相(甲殻類、両生類、魚類)、水路の物理構造、水質因子を測定した。
調査地で優占する沈水植物は、同科で外部形態・生育様式は類似するが、生活史上の顕著な差異を示すオオカナダモ(外来種、24地点で出現)とクロモ(在来種、22地点で出現)であった。2種が同所的に出現したのは4地点のみで、排他的な分布を示した。外来植食者であるアメリカザリガニの分布地点では、クロモの被度は有意に低く(Mann-WhitneyのU検定,p<0.05)、逆にオオカナダモの被度は有意に高かった。クロモの生育期がアメリカザリガニの活動も活発な夏期であるのに対し、オオカナダモは常緑で11月頃に最大現存量を示す長い生育期を持つとともに、切れ藻からの再生能力が高いことがアメリカザリガニに対する正反対の反応を介して、見かけ上の競争排除を生じさせている可能性があると推測される。