| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-235

淀川水系におけるカワヒバリガイとその寄生虫の現状

*馬場孝・浦部美佐子(滋賀県立大・環境科学)

2000年以降、天ヶ瀬ダムより下流の宇治川・淀川本流で外来寄生虫(ナマズ腹口吸虫、尾崎腹口吸虫)による魚病が発生している。両種の第一中間宿主は特定外来生物のカワヒバリガイである。琵琶湖・淀川水系では、カワヒバリガイの生息密度は天ヶ瀬ダムとその下流の宇治川で最も多い(Magara et al., 2001)。ところが、本種は転石の下面などの立体的な底質を付着基盤とするため、その生息密度の正確な推定は困難である。そこで、本種の浮遊幼生に着目し、単位水容積当たりの個体数を調査した。調査は、2010年6月から、琵琶湖南湖(唐橋)、宇治川(宇治)、淀川(枚方)において行った。また、同年8月26日から先端10 cmをほぐしたロープを天ヶ瀬ダムの発電所取水口および放水口に設置し、約2週間ごとにロープを回収して、定着したカワヒバリガイを計数した。

カワヒバリガイの浮遊幼生は、宇治川では9月9日に3116個体/m3の最大密度を記録し、その他の地点では、多くとも188個体/m3であった。このことから天ヶ瀬ダム付近でカワヒバリガイの生息数が大幅に上昇していることが示唆された。取水口での付着量のピークは、9月9~22日であったが(301個体/本)、放水口では8月26日~9月9日であり(2639個体/本)、9月9日~22日には減少した。このピークの時期の差は、9月16~17日に放流量が上昇したため、放水口では幼生が付着しにくくなったことによると考えられる。このことから大規模放流がカワヒバリガイの付着に負の影響を与えると示唆された。今後、相対的な生息量を他水域のそれと比較し、天ヶ瀬ダム付近でのカワヒバリガイの発生要因を解明する。

2010年7月に天ヶ瀬ダムの発電所取水口で得られたカワヒバリガイから尾崎腹口吸虫が発見された。このことから尾崎腹口吸虫が天ヶ瀬ダムより上流に分布拡大したことが明らかとなった。


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