| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-239
外来種の侵入は、長い時間をかけて築き上げられた生物間の相互作用を非常に短い期間で破綻させ、その土地固有の生物多様性に深刻なダメージを与えることが世界各地で報告されている。外来種の大部分は国外から持ち込まれたものであるが、一方で自国内における人為的移入により、本来の分布域以外に侵入した外来種(国内外来種)も多く報告されている。交雑や病原体汚染、在来生態系への影響といった側面からは、国内外来種も大きな危険性を持つと考えられる反面、これら国内外来種がもたらす影響の調査・研究例は非常に乏しい。
トノサマガエルは本来、本州(仙台、関東平野を除く)、四国、九州に分布するが、1997年に本来の分布地ではない北海道への侵入が報告された。発表者は、2006年以降の調査によりその分布が拡大傾向にあることを明らかにした。侵入地において目視による個体数調査を行ったところ、高密度で観察出来た(1分あたり平均53.5匹)。発表者は侵入地である北広島市、および南幌町にて196個体のトノサマガエルを捕獲し、胃内容物を調査した。その結果、本種の主な餌構成は鱗翅目幼虫、鞘翅目、クモ類などの地表性無脊椎動物からなることを明らかにした。同様の食性を持つオオヒキガエルにおいて、外来種としての侵入地における土壌生態系への影響が明らかになっていることから、トノサマガエルの侵入が与える影響も注目される。
そこで我々は、トノサマガエルの密度にばらつきがある侵入地10地点及びその近隣の未侵入地5地点において、トノサマガエル密度を調査したのちにピットフォールトラップを各地点に5個ずつ設置し、地表性の無脊椎動物の種数および個体数、体サイズを調査した。本発表では、トラップから得られたデータとトノサマガエル密度との比較を行い、外来の捕食者の侵入が地表性の無脊椎動物相に与える影響について考察する。