| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-240
ランタナ(Lantana camara L.)は南アメリカ原産のクマツヅラ科の低木であり、観賞用植物として世界中に広まった。しかし、現在では野外へ逸出したランタナによる生態系や酪農業への被害が深刻化している国もあり、IUCNが定める「世界の外来侵入種ワースト100」にも選出されている。日本での野生化は沖縄と小笠原で報告されているが、本土での越冬はまだ確認されていない。しかし、広島県の気温の上昇は日本の平均よりも高く、今後、ランタナの越冬が可能となり分布を拡大していく危険性がある。そこで、本研究では瀬戸内海沿岸域におけるランタナの野生化の状況と制限要因を明らかにすることを目的とした。
はじめに瀬戸内海沿岸域におけるランタナの分布を把握するため野外調査を行った。調査は広島県広島市から同県竹原市にかけての沿岸域とその周辺の島嶼部、さらに標高の高い内陸部で行った。調査ではランタナの分布を確認した地点をGPSで記録し、生息状況に応じ、「鉢植え」「地植え」「半野生」「野生」の4段階に分類した。
調査の結果、188か所でランタナの分布を確認したが、このうち41か所で半野生化し、37か所で野生化していた。また、内陸部ではランタナはほとんど確認されなかった。
この結果をもとにGISを用いて、半野生化および野生化が確認された地点の2010年1月の平均気温を調べた結果、すべての地点で5℃を超えており、内陸部では下回っていた。先行研究でランタナは冬の気温が5℃を下回ると越冬できないと報告されており、本研究の結果からも野生化の条件として必要である可能性が示唆される。また、野生化したランタナは市街地周辺でよく確認され、反対にランタナの植栽が少ない地域では確認されなかった。
以上の結果より瀬戸内海沿岸域ではランタナの野生化は可能であり、すでにはじまっていると考えられるが、人間の活動に大きく影響を受けていることが明らかとなった。