| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-177
カワウによる河川での放流魚の採餌,特に集団のカワウによる採餌が問題となっている.カワウはしばしば集団で採餌するが,単独採餌個体も多いことから,環境条件や餌分布に応じて採餌行動を変化させていると考えられる.放流魚への集団採餌発生パターンを明らかにできれば,食害防除の助けとなるだろう.しかし,カワウは短時間の採餌と長時間の休息を繰り返すため,河川を踏査しても集団採餌の場所や頻度を定量化するのは困難である.カワウは集団繁殖しており,営巣地から同時に飛び立つ群れは同じ場所で採餌している可能性が高いので,飛び立ちの方向や羽数などの出入りパターンからおおまかな集団採餌する個体数や採餌場所を推測できる.本研究では,コロニー(集団繁殖地)からのカワウの出入りパターンと餌内容を同時に調べることで,集団採餌の発生パターンとアユ放流を含む餌資源の変動の関係を明らかにすることを目的とした.
調査は山梨県甲府盆地のコロニーで行なった.2010年4月から10月に月1回,飛び立ち方向と数を日の出前から日没後まで記録した.また,コロニー内でカワウが吐き出した未消化物の塊(ペリット)を収集し,中に含まれる耳石や咽頭骨から餌内容を調べた.
コロニーの個体数は4月から7月は300羽前後で推移した.8月は560羽,9月は760羽に増加し,10月にはまた320羽に減少した.コロニーからの出入りパターンは調査期間を通して変化した.アユ放流直後の4月には飛び立ち集団サイズは平均1.5羽と小さかった.その後8月まで集団サイズが大きくなり,9月と10月には再び小さくなった.8月の平均集団サイズは6.5羽で,200羽以上の大群での飛び立ちがみられた.調査期間は河川における魚の産卵・生長時期であり,アユ放流・アユ釣り解禁などのイベントとも重なる.餌内容にも変化がみられたことから,餌分布の変動がカワウの集団採餌発生パターンに影響している可能性が示唆された.