| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-178
北海道東部では,特定外来生物に指定されているアメリカミンクによる在来種への影響が懸念されている.屈斜路湖畔の和琴半島では在来種であるエゾリスが生息しているが,数年前から減少し始め,それに対してアメリカミンクの目撃例が増加している.本研究では,エゾリスの生息および行動に対するアメリカミンクの影響を把握することをこころみた.
調査は2007年と2010年の2回行った.調査地の和琴半島は,主な広葉樹としてミズナラ,サワシバなどが生育しており,エゾリスの好むオニグルミは半島の入り口にわずかに点在する.針葉樹はトドマツを主とし,イチイ,エゾマツが分布する.エゾリスの調査は,目視とともに,捕獲檻,センサーカメラを用いて行った.探勝路沿いに捕獲檻10カ所,カメラ8カ所を設置し,捕獲檻のエサには落花生や剥きクルミを用いた.捕獲檻の見回りは午前と午後の2回行った.捕獲した個体は個体サイズの測定,雌雄の判別,蛍光塗料で尾にマーキング後,放逐した.目視による調査では,でエゾリスとともにアメリカミンクのフィールドサイン(食痕やフン)も探索した.
その結果,捕獲檻にはエゾリスが5回捕獲され,その他にアカネズミ,ヒメネズミおよびエゾヤチネズミが捕獲された.目視では,エゾリスの行動範囲内にアメリカミンクのフィールドサインが多数見られ,その他エゾクロテンやエゾタヌキのものも見られた.2007年に比べ,2010年ではエゾリスの捕獲数および目撃回数が激減した.主食となる堅果の生産量も影響していると考えられるが,アメリカミンクによる影響も否定しがたい.和琴半島周辺では2010年初めからアメリカミンクの駆除活動が開始されたが,本種は釧路湿原全域に分布拡大しているため再侵入するには多くの時間は必要ないだろう.今後も,エゾリスの行動をより的確に把握することを継続する必要があると考える.