| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-187
ガボン共和国には、熱帯雨林が多く残存しており、哺乳類の種数も多い。中大型の地上性哺乳類の多くは、糞の採取が比較的容易である。そこで、本研究では、ガボン南西部に位置するムカラバドゥドゥ国立公園において、中大型哺乳類の生息状況や分布を調べるために、できるだけ多くの糞を採取し、DNA分析を行ない、種同定を行なった。哺乳類において、配列情報が豊富なミトコンドリア、シトクロムb領域の配列を決定した。ただし中型の偶蹄類については、種同定に適しているとの報告があるコントロール領域の配列を決定した。糞の外見からも種同定が比較的容易な、アフリカゾウ、ウォーターバック、アフリカスイギュウ、ゴリラ、チンパンジーは、それぞれ登録配列と99%以上で一致した。アカカワイノシシは、登録配列が少なく、95%の一致であった。食肉目の糞には、ハナナガマングース、タテガミジェネット、アフリカジャコウネコの登録配列と99%以上で一致する試料があった。また、登録配列情報の乏しいアフリカゴールデンキャットは、系統樹の解析から、種同定を行なった。中型の偶蹄類では、イエローバックダイカー、ブルダイカー、ベイダイカー、ミズマメジカが生息することがわかった。オジルビーダイカーとピーターズダイカーは、コントロール領域でも種同定できないため、この両種もしくはどちらかの種がいることがわかった。げっ歯類の糞も1つ採取できたが、これはフサオヤマアラシの糞であると推定できた。このように、糞を用いたDNA解析から、多くの地上性哺乳類の種を同定できた。動物群によっては、種ごとの登録配列情報が十分ではなく細かい由来地域の情報も乏しいため、今後、様ざまな地域で動物のDNA配列情報が報告されれば、各地域の動物の遺伝的特性がわかり、DNA分析からどこの地域由来か推定できる可能性もある。