| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-226

インターネット上の外来生物情報の世界的傾向とその効率的共有への展望

*岡本 卓, 五箇公一(国立環境研)

外来生物問題は,原因・影響・対策とも多岐にわたる一方で世界共通の問題であり,同時に多くの日常的な人間活動と密接に関わっている.従って,根本的な解決のためには地域間・国家間での現状認識の共有と,一般への広報・啓発が必要となる.そのための手段の一つとして,ウェブサイトによる情報発信が,世界各地の関連機関によって行われている.また,外来種専門の国際組織 GISIN により,一定の標準に従うデータ提供を募るという方式での分散データベースの構築も進められつつある.

演者らは,外来生物の情報を扱っている約180のウェブサイトについて,掲載されている情報の種類・量などを比較した.その結果,以下のような傾向が明らかになった:対象となる地域は欧米やオーストラリアに偏っている; フォーマットや用語法が不統一である; 緯度・経度レベルの地点情報を持つサイトは少数である; 対象分類群は陸上植物に著しく偏っている; 影響に関する情報は比較的豊富な一方で,導入経路に関する情報がやや少ない傾向にある; 検索機能を持つ場合,名前・高次分類群名のみが検索対象である.

以上の状況から,内容に偏りがありつつも大量の情報が潜在的にはアクセス可能だが,フォーマットの不統一により,どこにどのような情報があるのかを探すのは非常に困難といえる.また,GISIN の分散データベースは,統合的な情報共有のプラットフォームとなりうるものだが,分布以外のデータベースが未稼働であるうえに,分布データの集積もあまり進んでいないため,実用的とは言えない状態である.そこで,現存する情報を有効活用するための方法として,ポータルとなるウェブサイトを介し,フォーマットの不統一を許容しつつ,必要な情報へのアクセス性を確保するための方策を考察する.


日本生態学会