| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-228
日本各地のダムを建設した河川の上・中流域で近年、外来樹木ハリエンジュが樹林化して、河道封鎖・堤防破壊や生物多様性減少などが危惧されている。植物相調査の結果、群馬県渡良瀬川上流に約30年前に建設された草木ダム周辺においては、ダム建設後も本来の生育立地が各地に残存し、山地性植物種が多く生存している一方で、山地性でない草本植物種および外来植物種も少なからず生育が確認された。また群馬県桐生市内の渡良瀬川河川敷における国土交通省との共同実験により、ハリエンジュを伐採することによって、植物種の多様性を回復できる可能性があるが、抜根まで行うと別の外来植物の繁茂を誘発する危険性があることが示唆された。
渡良瀬川上中流域における分布調査により、最上流の足尾町で植林したハリエンジュ由来の個体が、全体で57カ所において合計110,080本生育していると推定された。
ハリエンジュの根・茎・葉の各器官抽出液が、河川敷に生育する外来種3種(ナガバギシギシ、コセンダングサ、ショカツサイ)および在来種3種(チヂミザサ、ミゾコウジュ、メハジキ)の種子発芽に与える影響を発芽実験により検証した結果、茎および根の抽出液は、いずれの植物の種子の最終発芽率も大きく低下させた。またこの低下の度合いは、全体として外来種3種よりも在来種3種でより大きくなった。ハリエンジュの葉の抽出液にも同様の抑制効果があることが検出されたが、その効果は茎と根の抽出液よりも弱く、また時間が経つとさらに弱くなる可能性があると考えられる。いずれにしても、これらの在来植物の種子発芽に対する抑制効果は、野外調査で明らかになった、ハリエンジュ林およびその駆除後に外来種が特異的に多くなるという現象の一因になっていると推察される。