| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-235
外来植物は在来の植物を駆逐し、生態系の構造や機能を大きく変えることが知られている。そのプロセスは栄養的・非栄養的関係や土壌系と地上系の相互作用の改変など、非常に多岐にわたると考えられている。本研究では、我が国で最も普遍的に見られる侵略的外来植物であるニセアカシアに注目し、それが地上の代表的な捕食者であるクモ類に及ぼす影響を、住み場所構造の改変と餌資源量の改変の観点から明らかにすることを目的とした。
調査地は埼玉県熊谷市荒川河川敷に存在する森林で行った。ニセアカシアが優占するパッチと存在しないパッチの組み合わせを5つ選び、それぞれでクモ類の密度、飛翔昆虫類のバイオマス、下層植生の構造、リター層の物理化学性などを測定した。クモの造網足場として重要な下層植生の被度は、ニセアカシア区で減少したが、餌となる飛翔昆虫のバイオマスは季節間で傾向が変化した。造網性クモの個体数は、夏はニセアカシア区で少なかったが、季節を通じた明瞭な傾向はみられなかった。個体数が比較的多かった5種については、ニセアカシア区で少ない傾向を示した。クモの種ごとの個体数に足場と餌が与える影響を調べたところ、共通して足場量と正の関係が見られた。餌バイオマスとの関係は、正に効いた種(ウズグモ幼体)と、負に効いた種(ウズグモ成体・クサグモ)がおり、共通した傾向は見られなかった。寄生性のイソウロウグモ類は、主な宿主であるクサグモの個体数と正の関係を示した。以上、造網性クモの個体数は主に足場に制限されており、ニセアカシアは足場となる植生を減少させたが、飛翔昆虫との関係は、トップダウン・ボトムアップの両方が考えられ、クモの応答は一定でなかった。一方、地表徘徊性のコモリグモ類では、ニセアカシアパッチで増加する傾向が認められたが、その理由については現在検討中である。