| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-238
侵略的外来種は群集の生物間相互作用様式や生息環境を改変し、生物相に劇的な変化をもたらす。このような場合、その存在が早い段階で顕在化するため対応策を早期に講ずる事ができる。一方で、特に人目が届きにくく(例えば水中)実態が捉え難い種(例えば固有種と形態が類似している種)が侵入した場合、社会・産業活動に何らかの影響が出るまで、その存在が顕在化しないことがある。この傾向は特に海洋の生物に多い。この場合、対策はおろか、侵入種の定着・分布拡大プロセスの解明さえも、侵入後のデータから推測しなければならない。このような状況に対してどのような研究アプローチをとるべきか、その手法の構築は生物的侵入を明らかにするための新たな命題といえる。
東京湾は外来海洋生物の「ホットスポット」ともいわれ、我が国で最も多くの海洋性外来種が定着した湾である。近年、既に侵入した多くの外来種(多くは国外外来種)に加え、産業上の生物の移動に伴って予期せずに侵入する外来種、「非意図的移入種」(多くは国内外来種)の増加も報告されており、これらの種が産業活動(水産)に影響を与える事でその存在が顕在化する例がいくつか報告されている。2007年、千葉県の盤洲干潟に生息するアサリをはじめとする二枚貝を宿主として突如大量発生した寄生生物カイヤドリウミグモ(皆脚類)も、その例の一つである可能性がある。
本研究は、演者らがこれまで得てきたカイヤドリウミグモの生態的形質を総論すると共に、盤洲干潟での分布拡大・縮小のパターンを示し、得られた結果からそのプロセスについて検討する。特に、大量発生が生じた要因について外来種・在来種の2つのシナリオに注目し、それぞれの視点から議論を加える。