| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-241
人為的な環境改変は、在来生物にとっての生息地の質の低下だけでなく、しばしば外来生物の侵入機会の増加につながる。このような環境では外来生物から在来生物への負の影響が生じやすくなる。砂浜生態系は固有の生物相が成立していると同時に、防災やレジャー利用などの目的から人為的な改変も受けやすい。本研究では、海岸砂丘上部の防潮堤に侵入した特定外来生物セアカゴケグモによる環境省RDB準絶滅危惧種オオヒョウタンゴミムシの捕食を報告する。
2010年8月に愛知県の海岸砂丘上部の防潮堤において、造網しているクモの種組成、およびセアカゴケグモの網に残された節足動物の調査を行った。造網種の95%は外来種であり、64%がセアカゴケグモ、32%がクロガケジグモであった。特に多くの餌がかかっていたセアカゴケグモの網における、節足動物のバイオマス組成は、海浜性地表徘徊甲虫が約95%を占め、約50%が30mmを超える日本最大級のゴミムシであるオオヒョウタンゴミムシであった。何らかの残存物がみられたセアカゴケグモの網のうち、約50%の網でオオヒョウタンゴミムシの捕獲が認められた。他のクモの網ではオオヒョウタンゴミムシは確認されなかった。
網の残存物の全てが捕食されたとは言い切れないが、セアカゴケグモは比較的高頻度でオオヒョウタンゴミムシを捕獲していた。日本ではセアカゴケグモによる在来生態系への影響に関する知見は乏しい。しかし、砂浜生態系においては、人為改変に伴う防潮堤のような造網環境の創出がセアカゴケグモの侵入を促し、在来生物への負の影響をもたらす可能性がある。