| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-247
アカギはトウダイグサ科の常緑・半常緑高木で、1900年代のはじめより小笠原諸島に用材・薪炭材生産目的で導入されたが、戦後特に利用されることもなく放置されてきた。種子が鳥により散布され、近年父島・母島・弟島では天然更新を行なっている。現在、上木を対象として除草剤を用いた枯殺処理がおこなわれているが、埋土種子や鳥散布により更新しているアカギが目立ち、このまま放置すれば元のアカギ林が再生する危険性が高い。本研究では、アカギの再加入リスクを定量化し、上木根絶後の森林管理手法を提案することを目的としておこなった。アカギ実生の発生は、上木枯殺後2年経過するとかなり低くなることから、少なくとも2年間は下層で発生したアカギを駆除する必要がある。 在来樹種の実生発生率は、アカギや他の外来種に比べて極端に少なく、その要因の1つとしてクマネズミによる種子食害が考えられた。 アカギ上木枯殺区において、種子トラップ内に鳥散布によるアカギ種子の落下が確認された。アカギ種子の再加入率は、最も近い結実木から70m以内で高かったがそれ以上離れると低くなり、最長散布距離は144mであった。したがって、今後根絶区への再加入リスクを考えた場合、非根絶区から70m以内はハイリスクであり、おおよそ150m程度離れるとリスクはかなり低いと思われる。アカギを除去するだけでは、在来種の発生や定着を促進する効果が低く、むしろそれまで被圧されていた他の外来種の成長を促進し、繁殖量を増殖させてしまうことが明らかとなった。在来種の森林を再生させるためには、アカギ駆除と同時に、他の外来樹種の駆除と、種子を食害しているクマネズミの駆除が不可欠である。現在、西島など小面積の無人島でクマネズミ駆除が行われているが、今後、父島にような大きな島においても、在来種を育成する地域においては、クマネズミの侵入を防ぐための技術を確立する必要がある。