| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


シンポジウム S02-6

石狩浜における海浜植物保護の道のりと課題

有田 英之(石狩市石狩浜海浜植物保護センター)

札幌圏の水辺のオアシス石狩浜は、海水浴や釣りの場、また、地元では山菜ハマボウフウ生育の場として、持続的に利用されてきた。しかし、1970年代に入って、折からの山菜ブームに加えて、車の普及やアウトドアレジャーの多様化などにより、過剰なハマボウフウの採取や海浜植物が車に踏みつけられるなど、海浜利用の形態が以前とは大きく様変わりしてきた。

このような中、石狩浜の荒廃を危惧した石狩町(現石狩市)は、1978年に「石狩川河口海浜植物等保護地区」、1991年には「はまなすの丘」公園に指定し、石狩灯台から石狩川河口先端にかけた砂嘴区域の海浜植物保護に着手した。

一方、市民から保護要望のあった石狩湾新港までの約5kmの石狩浜について、1992年、石狩浜海水浴場両側1kmずつのエリアを石狩市が自主的に柵を設置し、車の進入を防止した。

石狩市では、2000年、石狩浜の保全活動の拠点として「石狩浜海浜植物保護センター」を開設し、自然愛好者・団体、大学・試験研究機関、市が協働で、植生回復や海浜植物群落の保全を図るため、環境保全意識の啓発や調査活動、保護対策に取り組んできた。

さらに2005年には、北海道が残る石狩浜の植生域に車進入防止柵を設置し、石狩浜海浜植生保護の態勢が整った。現在は、一部で植生回復が進む一方、自然回復不能なまでに植生や地形が消失したエリアもあり、マナーのないレジャー利用も後を絶たない。

今後、レジャーやレクリエーション利用のほか、砂丘海岸特有の多様な生物が生息・生育する場としての役割を担い、石狩市の文化・歴史・風土を育んできた石狩浜の望ましい姿の実現に向けた方向性を示していくことが課題である。


日本生態学会