| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-13 (Oral presentation)

回遊生物の漁獲戦略に関する考察 -回遊と齢構成を組み込んだモデルを利用して-

岩田繁英(国水研)

回遊を伴う生物を漁獲対象とする時,一年のどの時期に漁獲が行われるか,どの年齢の個体を対象とするかは地域によって異なる。その影響から若齢魚を対象にする漁業と高齢魚を対象とする漁業が地域に分かれていることもある。例えば,太平洋くろまぐろは高知で7-8月に20㎝-30㎝程度の若齢個体を漁獲し,大間では冬季に大型個体を漁獲する。このように回遊生物を漁獲し持続的に漁業資源として利用するためにはどのような戦略をもって漁獲を行えばよいのだろうか。

本研究では,回遊を伴い各生息地において成長段階が異なる場合どのような漁獲戦略を取れば対象魚を継続的に漁業資源として利用できるかを検討する。

方法として,2生息地で2年齢構造を入れた単純なモデルの構築・検討を行う。年齢構成は若齢魚とそれ以外(以後,高齢魚)の2年齢構造とし,生息地は二カ所(仮にA, Bとする)でAは産卵場,と仮定しもう一方は回遊経路上の生息地であり若齢魚が能動的に移動し始めてから初めて訪れる生息地であると仮定する。若齢魚は,3つの時期(産卵期,仔魚期,移動期)を仮定し移動期になるまでは生息地Aに滞留し能動的に回遊することはないとした。簡単のために高齢魚は2生息地を交互に移動することが可能で産卵期に産卵場と仮定した生息地Aにいる個体が産卵すると仮定した。漁獲戦略は若齢魚を選択的に漁獲する生息地及び高齢魚を選択的に漁獲する生息地の二つを定義した。最終的にどちらも漁獲量が最大化される漁獲戦略を検討する。解析は定常状態において平衡状態の漁獲量が最大となる漁獲戦略を基本として,移動の割合や変動が漁獲戦略にどのような影響を与えるか検討を行う。


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