| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) F1-09 (Oral presentation)
東南アジア熱帯林優占種の1種であるShorea leprosula (フタバガキ科) は、隣接する個体間で葉の虫菌害程度に大きな差が見られる。本研究は、S. leprosulaの葉の虫菌害程度にみられる変異が家系によるものなのかどうかを解明することを目的とした。
調査地は、インドネシア中央カリマンタンの民間林業会社PT. Sari Bumi Kusumaが管理する熱帯多雨林である。ここでは、同じ母樹由来のS. leprosulaを4個体ずつ80家系分植えたブロックを8ブロック繰り返した育苗試験が行われている。本研究では育苗試験で用いられているS. leprosulaから20家系を選び、1家系につき32個体(4個体×8ブロック)から、総計9860枚の葉を採集した。採集した葉の昆虫による食害面積と菌病害 (罹患部の外部形態より4パターンに識別) の程度について、それぞれ5段階のスコアを与えて個葉単位で定量化した。被害程度を応答変数とした一般化線形混合モデルを構築して変数選択を行い、家系が最適モデルの説明変数として採択されるか否かを確認した。
統計解析の結果、昆虫食害については家系は説明変数として採択されなかった一方で、菌病害については4パターンの内2パターンにおいて家系が説明変数として採択され、S. leprosulaにおける菌病害の発症には宿主側の遺伝的要因が関係している可能性が示唆された。今後は菌類の種特定と、菌害耐性に直接的に関わる機能遺伝子の特定やその機能分化について解析を進める必要がある。