| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) F1-10 (Oral presentation)

水田におけるクモ類の種数および個体数:農法の影響および地理的傾向

*田中幸一,馬場友希,浜崎健児(農環研)

平成20~23年度に、農水省委託プロジェクト研究「農業に有用な生物多様性の指標及び評価手法の開発」が実施されている。本プロジェクトの目的は、農業生態系における生物多様性の保全・向上に対する環境保全型農業の効果を科学的に評価するために、その効果を表す指標生物を選定し、その評価法を開発することである。23年度は最終年度であり、年度末までに最終的な指標生物が決定され、指標生物の調査法・評価法マニュアルが作成される予定である。その中でクモ類は、水田においても果樹・野菜などの圃場においても、全国的に共通性の高い指標生物としてあげられた。

本プロジェクトの課題として、栃木県の農法の異なる水田において、昆虫やクモ類の調査を行い、農法が種数や個体数に及ぼす影響を解析した。その中から、クモ類を中心として、結果を報告する。調査は、栃木県内4~6地域の有機・減農薬栽培水田と慣行栽培水田において、種々の調査法(見取り法、捕虫網によるすくい取り法、たも網による水中すくい取り法など)を組み合わせて行った。2008年、2009年ともに、水田内において500種以上の昆虫・クモ類を確認した。有機・減農薬水田では慣行水田に比べて、クモ類の種数・総個体数および主要種の個体数が多かった。

さらに、水田の有力な指標生物であるアシナガグモ属(Tetragnatha)について、水田における種組成および個体数の地理的傾向を解析した結果も示す。


日本生態学会