| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(口頭発表) I2-20 (Oral presentation)
トキの野生復帰を目指した放鳥が、2008年から佐渡島で開始された。環境省は、野生絶滅直前の知見を基に小佐渡東部(佐渡島南東部)を重点地域に指定し、地域住民への啓蒙、餌場の整備等を行ってきた。一方、放鳥後のトキは予測に反し、島内外の広い範囲に分散してしまった。このことは、当初の予測では不十分であり、現在の放鳥トキの行動パターンを分析し、トキが好む餌場と繁殖場所の特徴を把握した上で生息環境の整備・創出が必要であることを示唆している。
そこで本研究では、採餌環境および営巣環境の整備と創出につなげるため、1)野外調査データを基に採餌および営巣適地となる環境条件を解明し、佐渡島におけるトキの生息適地モデルを作成、2)予測された採餌適地と営巣適地について環境省指定の重点地域と比較した。
まず野外調査(2010年~)では、放鳥トキの採餌行動の調査および営巣位置の把握を行い、約1000か所の採餌場所(水田)と全17か所の営巣地を明らかにした。次に、それぞれの採餌場所と営巣地について、GISを用いて、周辺の餌場の指標(水田面積)、人間活動の指標(住宅、道路等)、地形等の環境要因について解析を行い、営巣適地および採餌適地の予測モデルを作成した。
本講演では、営巣環境と採餌環境という鳥類の保全上重要な2つの要因について佐渡島内での予測適地を示し、特にどのような地域を重点的に保護・整備する必要があるのか、あるいは、どのような地域の営巣環境や採餌環境を優先的に再生していけばよいのかについて考察する。