| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) I2-23 (Oral presentation)

野生鳥類に関する獣医学-生態学融合研究事例:カラス類の農村地域における疫学調査及び行動追跡

*長 雄一, 藤井 啓, 高田雅之, 濱原和広(道立総合研究機構)

野生鳥類の感染症への社会的・産業的な対応策を考える上で、獣医学-生態学融合研究領域の重要性が高まりつつある。

本発表においては、野生鳥類から家畜への病原体の伝播リスクを客観的・科学的に推定しようとする3カ年の研究プロジェクトの初年度の成果について、獣医学-生態学融合領域の先行事例として提示したい。

具体的な調査研究方法としては、北海道東部域を調査対象に、カラス類のねぐら等における集群数の定点カウント及び生体捕獲によるウィングタグ等の標識装着-個体追跡、車を用いたロードセンサス等の野外調査を行い、空間解析手法によりカラス類等の留鳥やガンカモ類等の渡り鳥の生息数や行動範囲の推定を行う。また、同一地域において野生鳥類の糞の採取・生体の捕獲・死体の収集等を行い、サルモネラ等の病原体保有実態調査を平行して行う。

本プロジェクトの最終的な成果目標は、野生鳥類について、生息環境・飛来時期・病原体等ごとに、どのくらい感染個体が存在し、どのくらい家畜等への伝播リスクがあるのかを推定することである。

本年度は、十勝川流域北西部の畜産農家周辺にて、野生鳥類糞の採取及び有害鳥獣駆除個体を用いた病原体保有実態調査を行うとともに、周辺環境別(デントコーン・麦等の作付け等で区分)でのカラス類等の飛来数推察を試みた。また、北海道東部の広い地域(オホーツク海沿岸域の網走地方から十勝地方まで)を対象に、ガンカモ類等の糞の採取を湖沼等で実施し(今年度は約700個採取)、現在分析中である。

渡り鳥-留鳥-家畜・家禽への伝播リスク推察及びそれを活用した野生鳥類-畜産防疫体制の構築に関して、「超えるべき研究面・実践面での壁」も含めて広く論議していきたい。


日本生態学会