| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) L2-16 (Oral presentation)

異地性資源補償が改変する栄養カスケード:消費者の社会関係を介した調節機構

*佐藤拓哉(京大・次世代),渡辺勝敏(京大院・理),村上伊佐弥(地域環境計画)

異地性資源補償が消費者の機能・数の反応を通して、受け手側の群集の栄養カスケードを改変することはよく知られている。消費者は年齢や体サイズといった個体群構造をもっており、それぞれの構造に属する個体間では資源補償への反応が異なるかもしれない。それにもかかわらず、異地性資源補償が受け手側の群集に与える影響について、消費者の個体群構造の役割を実証した研究はない。

我々は、森林-河川相互作用を人為的に改変する大規模野外操作実験によって、サケ科魚類の個体群構造が、陸生無脊椎動物供給 (TI) の河川生態系への影響を決定する重要な要因になることを明らかにした。TIを実験的に抑制すると、サケ科魚類は底生動物群集 (BI) への捕食圧を増大させた。しかしながら、この捕食圧の増大は、TIに大きく依存している大型魚ではなく、むしろ小型魚によって主に引き起こされていた。水中映像に基づく行動解析の結果、(1) 小型個体は、大型個体との干渉型競争のもとで、より柔軟にニッチシフトをしていること、(2) 成長に伴って、BIへの基本的な依存度が下がること (個体発生ニッチシフト) が、この現象のメカニズムだと考えられた。大型個体との干渉型競争により、小型個体はTIが比較的多い条件においても、しばしばBIに依存していた。すなわち、消費者の個体群構造は、TIが河川の栄養カスケードを改変する効果を弱めているのかもしれない。


日本生態学会