| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) L2-21 (Oral presentation)

富栄養湖におけるケンミジンコ群集の日周鉛直移動

*戸田 龍太郎(信州大・理) 花里孝幸(信州大・山岳総研)

動物プランクトンの生存戦略の一つとして,魚の捕食圧が高い日中には深層に移動し,捕食圧が低くなる夜間に表層に移動する日周鉛直移動(Diel Vertical Migration; DVM)がある.長野県諏訪湖でもケンミジンコ属のDVMが確認され,過去の研究から日中は湖底泥上まで降りている可能性が示唆されていた.そこで本研究では,DVMをしているケンミジンコが日中底泥上にまで降りているのかを明らかにすることを目的とした.

諏訪湖湖心において2011年4月21日から隔週で,湖水中の動物プランクトン群集を表層から底泥直上まで1m間隔で定量的に採取した.またコアサンプラーを用い,底泥上のケンミジンコの採集を試みた.採取したコアカラム(カラム径4cm)中の湖水及び浮泥をプランクトンネットで濾し固定した.また6月からは夜間にも同様のサンプリングを行った.サンプリング後室内にて顕微鏡下で種同定及び個体数のカウントを行った.カウント後Weighted Mean Depth(WMD)という計算式を用いて,ケンミジンコの平均分布を算出した.環境要因は0.5mごとに水温,DO,1mごとにph,EC,Chl.a濃度を測定した.

ケンミジンコの日中の密度は深層で最も高く,表層に近づくにつれ密度は低くなった.また底泥中にもケンミジンコが生息していることを確認できた。夜間ケンミジンコは全層にわたって分布しており,日中ほとんど確認されなかった1m付近でもケンミジンコの分布が確認できた.またケンミジンコの種類によってDVMに違いが見られ,強いDVMが確認されたのは大型の種であるA.vernalis,M.pehpeiensisで、DVMが弱かったのは小型の種のT.taihokuensisであった.夜間の底泥上の個体数は日中の半分以下であったことから,日中底泥上に分布した個体が夜になって水中へと移動したと考えられる.


日本生態学会