| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) L2-24 (Oral presentation)

全国沿岸のアマモ藻場における魚類群集の広域比較

*小路 淳,福田温史,上村泰洋(広島大・生物生産)ほか

北海道から九州にかけての沿岸域アマモ場において2009年より実施している広域調査により,三陸沿岸のアマモ場では魚類の種多様性,生産速度が全国でトップクラスであることが明らかになった.本発表では,2011年3月の大津波の影響が異なる3サイト(岩手県大槌湾:影響甚大;宮城県万石浦:影響大;広島県生野島:影響ほとんどなし)における津波発生以前(2009,2010年)および発生後(2011年)のアマモ繁茂状態と魚類の生息状況を比較する.さらにサイト間で空間比較も行う.上記3サイトにおいて,夏期にコドラートアマモの株密度と葉長を測定した.魚類採集網(目合い5 mm)を用いて100 m2のエリア内に分布する生物を捕獲し,魚種数,分布密度,バイオマス(いずれも100 m2あたりに換算)を測定した.2011年の大槌湾ではアマモ場がほぼ消滅し,株密度は2009・2010年に比べて有意に低かった.万石浦・生野島では株密度・葉長に対する年の影響は有意ではなかった.魚種数,分布密度,バイオマスは,大槌湾において2009・2010年に比べて2011には有意に低かったが,万石浦・生野島では年による有意な影響は認められなかった.大槌湾・万石浦では優占魚類の種組成が津波前後で異なり(2009・2010年:ウミタナゴ類,ヨウジウオ,メバル類;2011年:ヒメジ,ハゼ類),より強く藻場に依存する種から,砂泥底を主な生息地とする種へと変化した.以上のことから,3サイトのうち大槌湾では津波によるアマモ場および魚類群集への影響が最も大きかったと推定された.


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