| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-039J (Poster presentation)

栄養塩パッチが植物の成長に及ぼす影響は、パッチの出現時期と利用可能な栄養塩量により異なる

*松井萌恵,可知直毅,鈴木準一郎(首都大院・理工・生命)

土壌栄養塩パッチの出現時期と栄養塩総量の組み合わせが植物の個体成長に及ぼす影響について、栄養塩パッチに対し選択的に根を配置するホソムギ(Lolium perenne L.)を用いた栽培実験により評価した。栄養塩パッチは数日〜数十日間存続し、その空間分布は変化する。また、植物の栄養塩要求性は成長段階により変化する。そのため、栄養塩パッチの影響は、その出現時期と利用可能な栄養塩量により異なると推測される。

栄養塩分布パターン(ヘテロ,ホモ)、パッチ出現時期(定植後0日目,21日目,42日目)、栄養塩総量(貧,富)を3要因とした。6号鉢の中心から3cmの場所に埋設した直径2cmの円柱状の筒をパッチとした。異なる3時期に筒を抜き、遅効性肥料を混ぜた土壌を入れ、栄養塩パッチの出現とした。1個体のホソムギの実生を鉢の中心に定植後、全ての処理で21日目,42日目,63日目に刈り取りを行い、各成長段階で収量の差を処理間で比較した。

富栄養では、栄養塩パッチが0日目に出現した処理は、63日目の刈取りにて、21日目・42日目に出現した処理より収量が小さかった。一方、貧栄養では、パッチが21日目に出現した処理は、42日目の刈取りにて、0日目に出現した処理およびパッチが出現していない処理より収量が大きい傾向があった。成長初期に高濃度の栄養塩パッチが出現した処理では、成長は抑制された。一方、成長中期に栄養塩パッチが出現すると、植物の成長が高まる可能性がある。以上から、栄養塩パッチが植物の成長に及ぼす影響は、パッチの出現時期と利用可能な栄養塩量により異なると考えられる。


日本生態学会