| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-041J (Poster presentation)
植物が生育する土壌中の物理的障害物(以下、障害物)は、土壌を分断し、根の空間利用性を変化させ、植物成長に影響しうる。その影響は障害物の密度によって変化しうるので、異なる障害物密度の下で植物成長を評価する必要がある。さらに、障害物による空間利用性の変化に伴い、土壌栄養塩への根の到達しやすさは変化しうる。そのため、障害物による植物成長への影響は栄養塩利用性の変化を通じて生じる可能性がある。そこで本研究では、「障害物は植物成長に影響し、その強さは障害物密度で変化する。また、その影響の表れ方は栄養塩濃度で異なる」という仮説を栽培実験により検討した。
2段階の栄養塩濃度(貧栄養;富栄養)と4段階の障害物密度(障害物なし;低密度;中密度;高密度)を要因として、各条件につき14反復の1鉢に1個体ずつ植えたホソムギ(Lolium perenne)を栽培した。全条件で土壌体積は900mlとし、障害物にはガラスビーズを用いた。定植後8週間で刈り取り、条件間で乾重量を比較した。
障害物密度によって植物の乾重量は有意に異なり、その影響の程度は栄養塩濃度で変化した。貧栄養では、障害物存在下で乾重量は減少し、障害物の密度が高くなると減少の程度が有意に大きくなった。富栄養では、障害物の密度間で乾重量に有意差は見られなかった。
以上より、障害物はホソムギの成長に影響し、その強さは障害物密度によって異なった。また、その影響は栄養塩濃度によって変化することが示唆された。障害物と土壌を合わせた基質に注目すると、障害物が存在すれば、基質の体積当たりの栄養塩量は減少する。貧栄養で障害物が存在すると植物の乾重量が減少した。障害物による植物の成長抑制が栄養塩利用性の変化に伴う反応であり、貧栄養の場合に顕在化した可能性がある。