| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-043J (Poster presentation)

富士山から伊豆諸島に生育するススキとイタドリの生態学的・分類地理学的研究

*冨田美紀(静岡大 理),徳岡 徹(静岡大 理),吉永光一(静岡大 理),増沢武弘(静岡大 理)

日本列島の低地から富士山を含む高山まで、イタドリとススキは広く分布している。特に伊豆半島から伊豆大島にかけて、この2種はイタドリはハチジョウイタドリに、ススキはハチジョウススキへと変化している。生活型や形態も異なっている。しかし近年、伊豆半島の南東部に区別が難しい個体が広く観察されている。そこで本研究では、遺伝子解析と形態観察よって、ハチジョウイタドリとハチジョウススキの現在の分布を把握することを目的とした。

伊豆半島および伊豆大島、八丈島と富士山から、50個体のイタドリと55個体のススキを採集した。採集した植物はさく葉標本にし、葉の一部をシリカゲルで乾燥し保管した。遺伝子解析には、これらの材料からDNAを抽出した。葉緑体上のatpB-rbcL遺伝子間領域をPCRで増幅し、シーケンス反応後、塩基配列を読み取った。また、形態については作製したさく葉標本を用いて観察を行なった。

イタドリにおいて、遺伝子解析の結果より、伊豆半島や伊豆大島の海岸沿いの個体はイタドリ型と考えられた。また、伊豆大島の個体はハチジョウイタドリ型と考えられた。

ススキにおいて、遺伝子解析の結果より、伊豆半島14地点から採取された23個体のうち20個体がススキ型で3個体はハチジョウススキ型であった。一方、八丈島では、22地点26個体のうち24個体がハチジョウススキ型で4個体がススキ型であった。これより、常緑型のハチジョウススキの伊豆半島への分布拡大について、環境変動との関係から考察を行なった。

形態観察の結果から、採集したススキは全て小穂の長さが全て5mm以上であり、総よりも花序の中軸が長いものがないことから、伊豆半島と伊豆大島/八丈島にはトキワススキは分布していないことが明らかとなった。


日本生態学会