| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-044J (Poster presentation)
無性繁殖によって形成されたクローンを識別することは、個体群の動態を明らかにする上で重要である(e.g. 大原, 2010)。ミヤコアオイ(Asarum asperum)は根茎によりクローン成長を行う常緑性の林床草本で、その分散能力の低さから、人工林化の影響を受けやすいと考えられ、実際に人工林化による繁殖能力の低下がいくつかの研究で報告されている。しかし、人工林化がクローンの構造・動態やその遺伝的多様性に与える影響についての研究は少ない。
本研究では、人工林化がミヤコアオイのクローン構造に与える影響を明らかにすることを目的とし、滋賀県比良山麓の人工林と落葉樹二次林に生育する集団を用い、以下の2点の調査を行った。(1)クローン構造及びその動態を調べるため、2010年と2011年にジェネット毎のラメット数と葉長サイズ、実生・開花個体の数を測定した。(2)クローンの遺伝的多様性を調べるため、SSR多型解析を行い、Simpsonの多様度指数(D)、平均対立遺伝子数(Na)、Allelic richness(Rs)、平均ヘテロ接合度(H)を算出した。
その結果、(1)各集団で識別した全ジェネットの内50〜95%が単独のラメットで構成されていた。実生が確認されたのは二次林の1集団のみ(2個体)で、開花ラメットも人工林の方が有意に少なかった。(2)Dは全ての集団で0.774~0.982となり、高い多様性が示された。Hについては人工林と二次林で有意な差は認められなかったが、NaとRsは、人工林の方が有意に低かった。
これらの結果から、人工林化がミヤコアオイのクローン構造にどのような影響を与えるかについて議論する。