| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-045J (Poster presentation)
尾瀬大江湿原におけるニッコウキスゲへのシカ食害の影響を明らかにする為に、採食を受けたニッコウキスゲの追跡調査を行った。
大江湿原のニッコウキスゲは近年シカの食害で減少していると言われている。そこで開花や分布、被食状況を定量的に把握するために木村・吉田(2010)により調査が行なわれた。本研究では被食の影響を明らかにするために、被食を受けたシュートの翌年以降の反応を解析する。そのため、木村・吉田(2010)で設置された調査区を引き継ぎ、追跡調査を行なった。また、新たに作成した調査区も加え、識別した395シュートと、ライントランセクトとして設置した365個の1m×1mコドラートで区別した約6000シュートについて、個体数、サイズ、被食状況を調査した。シュートの識別については、ほとんどが同じ場所から翌年も生えてきて移動は少なく識別可能であった。
被食は繁殖器官である花と栄養器官である葉に分けられる。花の被食は調査対象シュートのうち開花した300のうちわずか8シュートで確認できただけであった。一方、光合成器官であり翌年以降への影響が大きいと考えられる葉については、調査区全体で約1割、多い調査枠では最大6割のシュートがおもに夏以降に被食された。
葉の被食を受けた場合の影響として、翌年の生存率・成長を被食されていないシュートと比較した。比較は、識別をして毎年データが取られている99シュートを対象とした。生存率は平均で98.0%、被食されなかったシュートは98.4%、被食シュートは97.0%と違いが見られなかった。成長は根際の径で比較した。径は平均0.541cm、前年からの変化は平均0.086cmで、前年と当年の径の差を比べると、被食されなかったシュートは平均で0.006cm、被食シュートは平均-0.048cmとなり、被食シュートは成長が悪いことがわかった。