| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-109J (Poster presentation)
市街地の公園や建物周囲の植栽は、自然環境が極端に少ない都市部に残された貴重なハビタットとしての役割が期待される。ところが、市街地における植栽が生物の分布状況にどのように影響を与えるのかの実証的な研究は乏しい。そこで、本研究では名古屋市において、チョウ類の食草などを植栽したプランターを設置し、チョウ類の出現状況と周辺の景観構造との対応関係を明らかにすることを試みた。
調査地は名城公園を北限とした名古屋中心市街地2km四方のエリアとした。調査地内に10ヶ所、上述のプランターを設置し、隔週でチョウ類の調査を実施し、種名・個体数を記録した。チョウ類の供給源となりうる緑地は、名城公園の他、市内に点在する公園緑地を空中写真判読で抽出した。これらの情報を元に、以下の2つの仮説の検証を行った。
仮説1)都市域であっても近くにソースハビタットがあれば、食草のプランターを設置することでチョウの来訪する可能性が高まる。
仮説2)街中の緑は飛び石となってチョウの分散を助ける。
解析では、供給源としての緑地サイズを考慮したプランター設置箇所までの距離(HanskiのConnectivity指標)とチョウ類の出現状況を説明する回帰モデルの構築を行った。緑地サイズの影響についてはConnectivity指標の係数αを変動させ、最も当てはまりの良いモデルを選択した。
結果、中心市街地に設置したプランター間の距離とチョウ類の種数には明確な関係が見出されず、大規模緑地からの距離が2km以内であれば、チョウ類はランダムに飛来することがわかった。また、中間の緑地の存在の有無は飛来するチョウ類の種数には影響を与えないことが示唆された。