| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-112J (Poster presentation)

鳥類群集の種多様性を指標とした都市環境の評価

*相澤章仁, 大山ゆりあ, 加藤顕, 小林達明(千葉大・院・園芸学)

千葉県松戸市では2005年度から市民参加によって市全域レベルで継続的な鳥類相調査が行われている。本研究ではその結果を用いて松戸市における鳥類の種多様性のパターンおよびその階層構造を明らかにし、空間レベルごとでの都市環境のあり方を検討することを目的とした。空間レベルは市民参加型調査の調査単位である1km四方のメッシュを最小単位(α1、n=65)とし、その上位に地区(α2、n=11)、地域(α3、n=3)、市全域(γ)という4段階を松戸市緑の基本計画を基に設定した。各レベル間での種組成の違い(β多様性)を加法的分解(γ=α+β)によって計算し、ランダマイゼーションテストによってその大小を検定したところ、地区間の種組成の違いが市全体の多様性に大きく影響していることがわかった。また、種の分布パターンについてNestedness Temperature Calculator(Atmar and Patterson, 1993)を用いて行ったランダマイゼーションテストでは、全体の調査区レベル・地区レベルの種分布パターンが極めて強い入れ子構造を示すことがわかった。加法的分解の結果から、地区間の環境の違いによって鳥類の種組成が変化していく可能性が大きいことが推測されるため、このレベルでの環境異質性を高めていくことが求められる。しかし、種の分布パターンが入れ子構造となっているため、これがβ多様性の向上を引き起こした可能性も考えられる。このことを検証するため、今後は各地区の種数や全体の多様性への貢献度などを説明する要因を地形や植生などの地理的情報から抽出し、これらのパターンをもたらしたメカニズムを明らかとすることで、具体的な方策について言及することができると考えられる。


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