| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-113J (Poster presentation)
モンゴル国の首都ウランバートル周辺の過放牧地域で現地調査を行い、草原退化の指標種であるブラントハタネズミ(Microtus brandti,以下ハタネズミ)の生息地の位置情報を記録し、人工衛星のデータを用いて、広域におけるハタネズミの分布について調べた。退化したモンゴルの草原はハタネズミの生息により、巣上および周辺の植生はArtemisia spp. (キク科ヨモギ属)やChenopodium spp.(アカザ科アカザ属)を優占種とした群落に改変される。このような植生群落は家畜の不嗜好性植物であるため、過放牧地域でもこうした種が生き残っている。このため景観としてはハタネズミの生息地は濃い緑のパッチが広がっている。こうした生態系のエンジニアであるハタネズミの拡散により退化草原は非平衡的な状態となる。非平衡状態を生み出す生態系エンジニアであるハタネズミの撹乱について、ハタネズミの空間分布を基に中立モデルを作成し、家畜の不嗜好性植物のメタ群落のパターンについて検討した。また山地草原ではハタネズミだけでなく、ダウリナキウサギ(Ochotona daurica)やシベリアマーモット(Marmota sibirica)など小型哺乳類が同所に集中し、ギルドを形成している。これら相利共生系における生態系エンジニアの働きによる共同関係や住み分けによる空間の異質性など小さな相利共生系が生態系に及ぼす影響について検討した。