| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-117J (Poster presentation)
生態系モニタリングは,持続的な人間活動のあり方を検討する上で重要である。湖沼堆積物に含まれる生物遺骸や生物・環境由来の化学物質は,過去の環境変遷を記録しており,これを読み解くことで過去から現在にいたる長期的な生態系変化をモニタリングできる。本報告では,北海道の湖沼堆積物中の花粉組成から,過去100年間の植生変化を検討した。
道東の羅臼湖と阿寒湖,道南のニセコ大沼の3地点で湖底堆積物を採取し,210Pb および137Csによる年代測定を実施した。過去約100年間に堆積した層準を花粉分析に供した。羅臼湖ではカバノキ属やハンノキ属の花粉が多く,これにコナラ亜属やクマシデ属/アサダ属花粉をともなった。またマツ属単維管束亜属花粉が多く出現した。阿寒湖では1947年以降の層準について分析した。カバノキ属やコナラ亜属の花粉が多く,ハンノキ属,ニレ属/ケヤキ属,トネリコ属などをともなった。モミ属やトウヒ属の花粉も多く出現した。ニセコ大沼ではカバノキ属花粉が優占し,コナラ亜属,ハンノキ属,クマシデ属/アサダ属などをともなった。周辺には分布しないブナの花粉も検出された。針葉樹では,モミ属,トウヒ属,マツ属複維管束亜属が出現した。
各地点の花粉組成は,周辺植生に対応した違いがみられた。ハイマツ群落に囲まれた羅臼湖ではマツ属単維管束亜属の出現率が高く,トドマツ林やエゾマツ林・アカエゾマツ林が多い阿寒湖ではモミ属やトウヒ属の出現率が高かった。ダケカンバ林の多いニセコ大沼では,カバノキ属花粉が最も多く出現した。3地点とも,花粉組成に経時的変化がみられなかったことから,少なくとも過去100年間については,大きな植生変化はなかったと考えられた。