| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-118J (Poster presentation)

近縁な汽水性希少ハゼ類の生息環境の違い ~複数の空間階層に着目して~

*乾隆帝(徳島大院工),江口勝久(佐賀県玄海セ),中島淳(福岡県保環研),竹村紫苑(徳島大院工),鬼倉徳雄(九大院農),鎌田磨人(徳島大院工)

汽水域は多様なハゼ類の生息場所である.しかしながら,近年の人為的環境改変の結果,現在では多くの種が環境省版のレッドリスト(2007)に掲載されている.よって,様々な種のハゼ類の保全策を提言する必要があり,そのためには,複数の空間階層に着目し,各種の生息環境要因を知ることが重要である.本研究では,2種のウキゴリ属魚類(キセルハゼ:絶滅危惧IA類,クボハゼ:IB類)に着目し,両種が生息する河川の流域特性および微小環境の違いを明らかにすることを試みた.分布調査は,2006年から2010年にかけて,九州全域 330水系の河口および河口に隣接する前浜干潟において,タモ網とスコップを用いておこなった.また,両種の採集された地点の一部において,塩分,底質の泥分・礫分率,アナジャコ類の生息孔の密度・内径を測定した.次に,両種が生息する河川の流域特性の把握のため,河口が含まれる3次メッシュを解析対象とし,集水域面積,集水域内の平野部面積,河川が流入する海域の傾斜角,内湾度(バッファサイズ1 km,3 km,6 km: open-hole, closed-hole)など,流域の特性を表す環境要因を説明変数としてモデルを構築した.その結果,キセルハゼは21水系,クボハゼは79水系で採集され,両種が生息する流域の特性は異なることが明らかになった.また,採集された地点において測定した環境項目を両種間で比較したところ,すべての項目で有差がみられた.これらの結果から,流域特性は,微小生息環境に影響を及ぼすことで,間接的に各種の生息/非生息に影響を与えていると理解できる.


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